ビットコインの基本
ビットコインETF
ビットコインETFとは、ビットコインと価格が連動するよう設計・運用される上場投資信託(ETF/Exchange-Traded Fund)の総称です。通常のETFと同じように証券取引所に上場され、投資家は証券会社を通じて売買が可能となります。また、運用会社がETFの資産から手数料(信託報酬)を徴収する点でも同様です。
貴金属や不動産を投資対象としたETFは10年以上前から存在しており、その「ビットコイン版」と考えればよいでしょう。ETFとしてビットコインが取引可能になることは投資家(特に機関投資家)にとってメリットが大きく、ビットコインへの投資が拡大することが期待されます。
本記事では、投資家がETFを利用するメリットとデメリット、現物ETFと先物ETFの違い、アメリカで現物ETFが上場されるまでの動きを解説します。
ETFを利用するメリットとデメリット
暗号資産取引所などでビットコインを直接購入する場合と比べて、投資家がビットコインETFを利用するメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
- ETFの上場・運用には厳しい公的規制があるため、詐欺や価格操作などのリスクが低い。
- 自分でウォレットを管理する手間がなく、秘密鍵の紛失や盗難の恐れがない。
- 証券会社の口座をそのまま利用でき、新たに暗号資産取引所の口座を開設する必要がない。
- 多くの国で税制の優遇がある。
デメリット
- ビットコインを自己管理できないことから、ハッキングなどのリスクがある。
- 運用会社への信託報酬が発生する。
- 証券取引所の立会時間外(夜間や土日祝日)は取引できない。
- 支払いや送金に使うことができない。
ビットコインETFは、特に機関投資家にとってメリットが大きいとされます。複数人が共同で資産を運用しているような場合において、誰がウォレットの秘密鍵を管理するのか、内部の人間によるコインの横領をどう防ぐのか、といった問題を考える必要がなくなるからです。
現物ETFと先物ETF
ビットコインETFは「現物ETF」と「先物ETF」の2つに大きく分けられます。
現物ETF
現物ETFは、ETFの資産としてビットコインを直接保有します。ビットコインの価格に合わせてETFの純資産額が変化することで、ETF価格とビットコイン価格が連動する仕組みです。また、実際にビットコインを保管するのは「カストディアン」と呼ばれる専門の業者が担うことが一般的です。現物ETFは市場に流通するビットコインを減らす効果があるため、後述の先物ETFよりも価格上昇につながるとされます。
先物ETF
先物ETFは、ビットコインそのものを保有するのではなく、先物などのデリバティブ取引を利用して価格を連動させる仕組みです。既存の先物市場を利用することで、価格操作のリスクが減少するとされる一方、先物取引のカウンターパーティーリスクを負うことになリます。
デリバティブを利用することで、価格がビットコインの2倍以上変動するレバレッジ型ETFや、ビットコインと逆の値動きをするインバース型ETFも実現することも可能になります。
なお、ETFに先物を組み入れるのはビットコインに限った話ではありません。例えば、株価指数のレバレッジ型ETFやインバース型ETFも先物を利用することで成り立っています。原油や銅など現物の保管にコストがかかる場合や、新興国株式のように流動性が低い場合にも先物が使われます。
アメリカで現物ETFが承認されるまで
ビットコインETFは、機関投資家がビットコインへ投資するハードルを下げるものだとされます。そのため、ETFによって機関投資家によるビットコイン投資が拡大し、価格の上昇にもつながると見込まれています。ただし、ETFの上場には規制当局による厳しい審査をクリアしなければなりません。
2021年10月、アメリカの証券取引委員会(SEC)はビットコイン先物ETFを承認し、「ProShares Bitcoin Strategy ETF」が上場されました。その後は、ビットコインのレバレッジ型ETF「Volatility Shares 2x Bitcoin Strategy ETF」や、インバース型ETF「BetaPro Inverse Bitcoin ETF」も上場へ漕ぎ着けています。
SECはビットコイン先物ETFを早期に承認した一方、現物ETFは価格が人為的に操作される可能性があり、投資家を保護する仕組みが不十分であると主張し、承認を見送ってきた経緯があります。ところが2023年の夏、こうした状況に一変させる2つの「事件」があったのです。
最初の事件は2023年6月、世界最大の資産運用会社ブラックロック(Blackrock)が、ビットコイン現物ETF「iShares Bitcoin Trust(iシェアーズ・ビットコイン・トラスト/IBIT)」の上場を申請すると発表したことです。さらに、フィデリティ(Fidelity)やインベスコ(Invesco)を含む大手ETF運用会社も相次いで上場申請を行いました。
2つ目の事件は2023年8月、ビットコイン投資信託のETFへの転換をめぐる訴訟で、資産運用会社のグレースケール(Grayscale)がSECに勝訴したことです。判決では、既に承認された先物ETFと現物ETFが「実質的に類似する」と認め、SECが現物ETFを認めないことは「恣意的で気まぐれ」であり、連邦政府機関は「同じようなケースを同じように扱う」ことが求められるとしました。
そして2014年1月10日、SECはついにビットコイン現物ETFを承認。先ほど紹介したIBITを含む11銘柄が、アメリカの証券取引所に上場されました。
余談ですが、ヴァルキリーが運用している「Valkyrie Bitcoin Fund」のティッカー(銘柄コード)は「BRRR」となっており、これはお金を印刷する音を示すネットスラングとして知られています。2020年初頭に新型コロナウィルスが全世界に広まり、多くの国で大規模な財政出動や金融緩和が行われた際、「Money Printer Go Brrr」というミーム画像がビットコインコミュニティの間で流行しました。
日本におけるビットコインETF
日本においては、先物・現物ともにビットコインETFの上場申請が行われたことは一度もなく、もちろん上場もされていません。さらに、日本国外のビットコインETFを取り扱う国内の証券会社も、2024年2月現在では存在しません。
日本の所得税法では、ビットコインの売買で発生した利益は原則として雑所得となり、給与など他の所得と合算して総合課税(累進課税)となります。この場合の最高税率は、住民税と復興特別所得税を合わせて55.945%に上り、諸外国と比べて著しく高いことが問題になっています。
仮に日本でビットコインETFが上場された場合、税率は他のETFと同じく20.315%(住民税と復興特別所得税を含む)の申告分離課税になると考えられます。さらに、株式との損益通算が可能になり、特定口座を使うことで確定申告が不要になるというメリットもあります。そのため、日本でもビットコインETFを期待する声は少なくありません。
主要なビットコイン現物ETF
国 | ティッカー | 運用会社 ETF名称 |
---|---|---|
🇺🇸 アメリカ | GBTC | グレースケール Grayscale Bitcoin Trust |
🇺🇸 アメリカ | IBIT | ブラックロック iShares Bitcoin Trust |
🇺🇸 アメリカ | FBTC | フィデリティ Fidelity Wise Origin Bitcoin Trust |
🇨🇦 カナダ | BTCC | パーパス・インベストメンツ Purpose Bitcoin ETF |
🇩🇪 ドイツ | BTCE | ETCグループ ETC Group Physical Bitcoin |
🇺🇸 アメリカ | ARKB | アーク・インベスト/21シェアーズ Ark 21Shares Bitcoin ETF |
🇺🇸 アメリカ | BITB | ビットワイズ Bitwise Bitcoin ETF |
🇨🇭 スイス | ABTC | 21シェアーズ 21Shares Bitcoin ETP |
🇬🇧 イギリス | BTCW | ウィズダムツリー WisdomTree Physical Bitcoin |
🇨🇦 カナダ | BTCX.B | CIインベストメンツ CI Galaxy Bitcoin ETF |
🇺🇸 アメリカ | BTCO | インベスコ Invesco Galaxy Bitcoin ETF |
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